どうも、Carlです。

今やどでかいヒーローブームが到来してユニークな能力を持ったヒーローたちが人々の希望として活躍してますよね(映画の中で)。

それにしてもヒーローとはなんでしょう?
僕の中で”ヒーロー”の定義は「見返りを求めず、自己犠牲の精神で誰かのために尽くす人」です。
つまり彼らは必ずしも特殊能力を持っているわけではありません。自分が傷ついても嫌われてもその誰かを守るその行動こそがヒーローを生むのです。

これはキャプテンアメリカやスーパーマンよりももっと身近で生々しいヒーローのお話。

SPOILER ALERT
ネタバレ注意

Drive2011Poster

ドライヴ(2011)
Drive

DIR:ニコラス・ウィンディング・レフン
STR:ライアン・ゴズリング
   キャリー・マリガン
   ブライアン・クランストン
あらすじ
昼は車の整備工場と映画のスタントをし、夜は犯罪者を助ける”逃し屋”であるドライバーは隣人の母子と仲良くなる。しかし、彼女の夫が刑務所から出所してしまい…。




オープニングシーンから完全に心持って行かれますよね。
なんてかっこいいんだ…!

無線とバスケの試合をラジオで聞きながらじーっと黙って待つドライバー。すごいカーチェイスが繰り広げられるのかと思いきやパトカーが通ると路駐して電気を消す。すごくリアルで緊張感漂う逃亡ですよ…。
そして目的地に着いたら試合に負けた方のチームのキャップをかぶって闇に消える。ここで「ラジオはそのためだったのかあああ!」と早くも一本取られましたね。

静かな、闇に紛れてクールな、実践的なこのカーチェイス(?)は映画史に残るオープニングだと思ってます。
01 PM

この後の挿入歌、ケビンスカイのナイト・コールがまたかっこいいんですよおおおお
夜のロサンゼルスに生きる男、まさにドライバーを歌っているかのようなぴったりの曲です(僕のケータイにダウンロードしてあります)。




ここで映画はセットアップに入ります。
アイリーンと子供の紹介。整備工場のシャノンの紹介。バーニーとニノ。

レフン監督独特の雰囲気でゆっっっっっっくり進んでいきます。
ドライバーとアイリーンも全然おしゃべりしないし、二人で音楽もなしにただじーっと見つめ合ってるというシーンがいくつもあります。
このロマンス映画にありふれた時代、視線だけでこんなロマンチックな映画ありますか?いいえ、ないでしょう!

10 PM
15 PM

アイリーン演じるキャリーマリガンもショートヘアで静かでとてもいい感じ。というかあんな無口のドライバーといて平気なのってそうそういないよ。 

3人でドライブするシーンで、この映画のテーマソングとも言える曲が流れます
「Real human being〜♪ And a real hero〜」
この曲がこの映画を理解するには重要になってきます。



ところで多分ネタバレあり感想なのでこの映画を見た事ある人しか読まないでしょうから上の紹介文にあらすじはほぼ要らないと思いますが、このあらすじいいとこで止まってると思いません?w

初めて見た時テンポ遅くて「なんだこの映画は。遅い展開ばっかりにしやがって…許さんぞ!」とか思っていましたよ…そう、オスカー・アイザックが撃たれるまでは。
全くの予想外でした。名のある演技派俳優ですし出てきたばっかで「これからアイリーンとドライバーの関係はどうなるんだ?!」って思っていたら殺されちゃうんですから!
ここで僕の予想していた展開全てが裏切られました(いい意味で)。

ここから映画は急発進をかけますよね。まるでエンジンを温めておいたレースカーがスタートの合図で動き始めたみたいに。



そして、この映画最初で最後と言っていい本当のカーチェイスがあり、モーテルで2人組に襲われますね。
危険が去った後、血まみれの顔をトイレから覗かせた後ゆっくり隠れるようにカメラの死角へと引っ込みます。何かを信じられないかのように。何かに怯えているかのように。
38 PM




ドライバーは仇を取ることを決意しますが死ぬかもしれません。
彼自身人殺しを望んではいません。できれば避けたいです。
そこでアイリーンに全てを話し、逃げることを提案します。彼も一緒に。
(思えばこれが彼なりの告白だったのかもしれませんね…彼、不器用ですから)
話が終わる前にあのエレベーターシーンです。
こんなロマンチックなシーンは映画史上数えるほどしかないでしょう!
そのあとに自分たちを襲おうとしたニノの手下をボコボコ(というかグチャグチャw)にしてアイリーンにひかれます(というか嫌われます)(怖がられる、かな)。
17 AM





シャノンを殺され、スタント用のマスクを被った彼はニノを殺します。
そして、バーニーとの最終決戦です。
「金を渡せば女には手を出さないしお前も逃す」
2人は微笑み、金を取りに車まで行きますがバーニーに刺されてしまい、刺し返えします。
ここのシーン影だけで写すのは頭いいですね。実際に刺殺シーンを見せるより安く簡単に済みますし、どっちが殺されたのかわからなくすることもできます。(そしてもう一つ…)



勝利したにせよ致命傷を負ったドライバーは命を落としたように見えますが、再び車を発進させて夜の闇へと消えます。
「Real human being〜♪ And a real hero〜」





いやーレフン監督の色使いも証明もカメラワークもどれを取っても大胆で最高です!
さらにこのゆっくりな話しの進み方も、嫌われてでも命を賭して惚れた女を守るハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよくわからないところもツボツボです!!!!

まあ僕にはツボツボですが、逆にそこが嫌いという方の意見も全然納得できます。この映画、万人受けではないですし、一般層が好きそうな感じの逆行ってますからね。



さて、いくつか説明したいところがあります。


まずドライブのシーンで流れるA Real Heroは、アイリーンたちにとってドライバーはヒーローに見えたことを示唆していると思います。
だって、夫/父親が刑務所に入っていたら寂しいでしょう。多分周りからも除け者にされていたんだと思います。犯罪者の家族だからって邪険にされることもよくありますし。
そこに現れたドライバーはそのことに関しても何も追求せずただただ黙って家まで送ってくれる。(しかもイケメン)そんな彼がヒーローに見えたのかもしれません。

一方、ドライバーの方も、犯罪者の援助運転やスタントなど少し自暴自棄になる程何もない暗闇の中の生活に光を灯してくれたアイリーンたちがヒーローに見えたのでしょうね。


次に決定的なこの映画の軸ですね。
バーニーとの決戦の前の電話でサソリとカエルの話が出てきます。
 サソリ「ねえねえ、カエルさん。川の向こう岸に行きたいんだよ。背中に乗せてくれない?」
 カエル「えー、ヤダよ。だって君、僕のこと刺すだろ?」
 サソリ「いやいやいや、刺さないよ!だって君が沈んだら僕も沈むぜ?」
 カエル「…うーん、まあそれもそうか」
 そうしてサソリを乗せたカエルは川を渡る途中にサソリに刺されます。
 カエル「おいお前まじでか。刺さないゆーたやないか」
 サソリ「ごめんごめん、本能には逆らえなかったわ⭐️てへ」

という寓話ですね。
つまり”人の本質は変えられない”ということです。これが今作のテーマ。
03 PM

(このシーン↑でも”サメは悪者で良いサメはいない。だってサメだもの”と言ってますね)
スタンダード(アイリーンの夫)は出所しても堅気の人間になることができずにまた犯罪を犯してしまう。
バーニーは「金を渡せば手出ししない」と言いながらドライバーを刺す。
そしてドライバーも本来はサソリ側、犯罪者側の人間。アイリーンたちと普通の生活を送ろうとしますが、結局暴力的な世界からは抜け出せなかった。
(最後のバーニーとの決戦での影は、2人が同じ穴のムジナである事を示していたのだと思います。)


モーテルでニノの手下2人を殺した後魅せる表情は”自分の暴力性(サソリ)に気づいた戸惑いと恐怖”です。
自分は無害なカエルだと信じていたドライバーはショックを受けます。
それでもまだそんな真実を受け止めたくないドライバーはアイリーンたちを頼ります。
「違う、俺はカエルだ…!彼女らたちと過ごしている時はカエルになれる!」と一緒に逃亡することを提案します。
しかし、エレベーターの中で敵に見つかります。そこで彼は覚悟を決めたのです。
「この男を殺さなければ俺どころか彼女まで殺られる。ああ、これが俺の宿命か」そう思ったドライバーは最初で最後のわがままでキスをします。
(こんなに切ないファーストキスがありますか!!)

その後、自分の凶暴性を解放して見事彼女に嫌われます。これは、アイリーンがヒーローだと思っていたにも関わらず”刺して”しまった裏切り行為なってしまいましたね。
エレベーターのドアは閉まり、もう後戻りはできない。
50 PM

バーニーとの取引で2人は微笑みます。ドライバーはこの時点でバーニーに刺されることはわかっていたのでしょう。しかし、アイリーンたちを失って元のように自分の身を顧みない彼は阻止しようとしません。しかも案の定刺し返してしまいますねw(こっちもサソリなんだよ!)

瀕死のドライバーは死を受け入れようとします。
しかし、A Real Heroの音楽と共にまだ走り続けることに決めます。なぜなら彼は”本当のヒーロー”になれたからです。自分がサソリであることを受け入れ、その毒針を他のカエルではなく他のサソリに使うことを決めたのです。自分がカエルになることを諦めてカエルを救おうというのです。自分の中にヒーローを見つけたから…。

これこそが自己犠牲の真骨頂!
(これこそ僕がパニッシャーやバットマンという少しアンタイヒーローぽいヒーローが好きな理由です!彼らは彼らの身に起こったことを他の人たちに起らせない為に危険な嫌われ役を買って出ているのです)


ニノを殺す時にスタントマスクを被りましたが、これは顔を隠すためではありません。もう顔割れてますからね。
”スタントマン”とは役者の代わりに危険なことをする人たちですよね。あれはドライバーの内なる凶暴性、名付ければヒーロー「スコーピオン」です。危険なアイリーンの為にマスクを被り、仇を討つのです。
(ちなみにバーニーの時に被らないのは、あくまで仇はニノであり、バーニーは死んでも生きててもどっちでも良かったからです。結果的に殺したのも正当防衛ですしね。)


すごいのは”ドライバーとアイリーンは住む世界が違う”と色で語られてるところですね。
まず二人が話している時に同じフレーム内にいることは滅多にないです。
55 PM
37 PM

45 PM
37 PM

背景の色が違ってるんです。だいたいこの角度から撮る時はキャラクターの目線の方に多くスペースを作るのが常識ですが、なぜか逆に使われてますよね。この撮り方は後ろを強調したい時によく使われます(ホラー映画で後ろからモンスターが迫ってきてたり)。背景に目を行くように仕向けて色の違いで「彼らは違う世界の住人だ」ということを言っているのでしょう(ある意味ロミオとジュリエットですよ!)

3枚目4枚目の背景の色は同じですが、2人の後ろのドアがそれぞれの世界を表しています。
賑やかな、人のいる家 と 素朴な外の世界(EXITは外へ通じる非常口ですね)
(1枚目にドライバーが鏡に映っているのは”まだ本性、素を出していない”という意味合いでしょう)
38 AM

たまに同じフレーム内にいてもまた背景の色が違います。
さらにこの画では
夕日に照らされたアイリーン と 壁の影で照らされないドライバー
表の世界で生きる者と裏の世界で生きる者でしっかり分かれています。




このようにセリフが少ないからこそ、展開が遅いからこそたくさんの意味を持ってる映画なのです。
とりあえず長々と語っちゃいましたがこの映画に対する僕の愛と僕のツボが少しでもわかっていただけたら幸いです。

それにしても無口で不器用な男を演じるゴズリング兄貴かっこいいですが、やっぱり変人の役の方が似合いますねw

では。

ドライヴ [Blu-ray]
ライアン・ゴズリング
バップ
2012-09-19




P.S.
自分がサソリだと気付いたドライバーは驚いてたけどあんた一番最初からサソリを背中に背負ってるじゃないかい!
このアイコン的なスタジャンかっこいいですよね〜異質な映画な割にちょいちょいヒーローっぽいとこも抑えてるのがまたツボなんですよ!
いわゆるヒーロー・コスチュームですねこれ